小説

Every Little Thing

第 4 話

その、まるで自分が部外者のように感じたのはその一回だけじゃなかった。

それを次に感じたのは、ある晴れた塾帰りの夕方だった。期末試験がせまる中、塾に通うことにしたのだ。そしてコナンがついていくと言い出し、それに自分がおれたのだ。コナンがいうには、新一に戻ったときのために勉強しなきゃいけないらしい。それでコナンは自分が預かっている子供ということになり、塾では私の隣に座るようになった。みんなが、塗り絵でもしているのだろうとおもっている中、実際は数学のノートを取っているということをちょっと面白いとも思っていた。

会話しながら帰る途中で花屋のまえを通ったときだった。コナンが立ち止まって窓越しに見える、新しそうなピンクの百合に目をとめた。

「し―じゃなかった、コナン君、花、好きだったっけ?」
新一、と言いかけたところであわてて言い直す。外ではコナン君、蘭姉ちゃんって呼びあうっていうことになっている。

「へ? ああ、灰原が最近なんか落ち込んでるみたいだからよ。ちょっと元気付けられたら、ってな」

「哀ちゃん、花好きなんだ?」

「解剖するのは好きなんじゃねえか」

返事はよくきこえなかったけど、なんとなくそう言った気がする。
けど、聞き間違いよね。
小学生の女の子が、ねぇ?

「なんて言ったの?」

僕、何もしてないよ、っていうような表情でコナンが見上げてきた。

「知らない。バラが嫌いなのは知ってるんだけど」

それで少し興味がわいた。
女の子は、普通、花が好きだ。
バラ、しかも好きな人から贈られた赤いバラならなおさらに。

「あら、なんで?」

コナンは肩をすくめ、もう一度新一に立ち戻り、呟くように言った。

「理由を聞いたこと、ないんだよな。どうせ教えてはくれないんだろうけどさ。たぶん、彼女の姉の死に関係してるんだと思うんだけどな。なんかいつも親の仇みたいに睨んでるんだよ」

「哀ちゃんってお姉さん、いたの?」

これは初耳。

コナン、いや、新一が私を見上げる。

「ああ、けど彼女には聞くなよ。あまり話したがらないからな」

「そうなの」

コナンは私にもう一度笑いかけて、花屋のなかへはいっていった。数分して、片手に大きなピンク色のユリを、反対の手には赤いバラをもったコナンが出てきた。彼はバラを私に差し出した。

「はい、蘭姉ちゃん」

コナンが笑った。
私も笑顔でそれを受け取る。

「ありがと」

コナンは腕時計を見て

「行かなきゃ。また来週な」

急ぎ足で去っていくコナンに手をふる。

私は悲しげに手に持つバラに笑う。新一に赤いバラをプレゼントしてもらったのに、何かがうまくはまらない。灰原哀へのユリと隣り合わせると、彼の愛をうたうバラが色あせて見えてしまう。

それにずっと疑問を抱きながら帰った。
何でそう思うんだろう?

心のそこではわかっていた。

そのバラは、いえば『ついで』だった。新一は哀ちゃんに花を買うために花屋へよったのであって、私にバラを買うためじゃなかった。

新一は私のことを覚えててくれたのだから、こんなことを考えるのは悪いけど、どうしてもほかの女の後に回されたという思いを止められなかった。