小説

Every Little Thing

第 3 話

次に覚えてるのは、彼を迎えに帝丹小学校に行ったとき。一週間とちょっと、新一に会ってなくて、それで小学校に赴いたの。寄り道でもして、喫茶店でちょっとお話でもできたらと思って。

放課後になった時間、正面の門のすぐそばで待っていた。前をたくさんの子供たちが通っていったけど、見知った子はいない。すこしして少年探偵団のみんなをみつけた。歩美ちゃんと光彦君、元太くんはなにかについて言い争いながら門からでてきた。

「こんにちは、歩美ちゃん、光彦君、元太君」

普段の明るい笑顔で呼びかける。

「蘭姉ちゃん!」

歩美ちゃんがさいしょに返事してくれた。
元太君が聞いてくる。

「どうしてここにいるんだ?」

「コナン君がちゃんとやってるか見に、ね」

ちょっと笑う。

「最近ちょっと会ってないから」

三人が校舎のほうを振り返って見た。

「たしか、灰原さんの教室の掃除手伝ってましたよ」

光彦君が、考え事をしているかのような表情で教えてくれる。

「うん、みどりちゃんがかぜで休んだから、コナン君が手伝うっていいだしたんだよ」

歩美ちゃんがそれにつけたす。
そのとき元太君が私の時計を見て、あわてはじめた。

「ああ~! 仮面ヤイバーがはじまっちまうぞ! 急がないとオープニング見逃しちまうぞ!」

そして現れたとき同様、三人はほかの子供たちのあとを駆けていった。もう少し待つこと五分、もう二人の子供がガラスドアの向こうに見える廊下を歩いてくるのが見えた。コナンも哀ちゃんも、何かについて議論していて、まだ私には気づいていないみたい。コナンの表情からすれば、コナンのほうが負けているみたい。

コナンがドアを開け、哀ちゃんを通す。

「人生、分からないほうがいいこともあるのよ」

哀ちゃんが出てきて会話が聞こえるようになる。

「そのために探偵とか科学者がいるんだろう、灰原」

コナンが哀ちゃんにかえす。

「謎を解き、理解する。どんな謎でも、それは同じだ」

「この世で本当に無限なのは二つしかない。宇宙と、人の愚かさよ」

二人は玄関前の段差で立ち止まる。
哀ちゃんの栗色の髪とコナンの黒髪とがやさしい風にゆれる。

一瞬、まるでわけのわからない映画を観客として見ているような気分になる。

コナンの顔に浮かぶ苦い表情が見える。
やっぱり、どんな姿でも新一は新一なんだ。

「どういう意味だ?」

その問いのあとに重い沈黙がおりる。私がこの会話を理解できないのは最初から聞いてなかったかならのか、それともほかのなにかが原因なのか。

「ただ、私の人生がその愚かさで表現されることがいやなの」

コナンから顔をそらし、段差をおりながら哀ちゃんがようやく答えた。

コナンは彼女になにかを言おうとしてたみたいだったけど、二人とも興味深そうに見ていた私に気づいた。そこで彼らのちょっと変な会話は途切れてしまった。あとで何度も新一に聞いたけど、会話の内容は教えてくれなかったのを、まだ覚えてる。