小説

Every Little Thing

第 2 話

コナンが買い物に一緒に行くって約束してくれた日だった。夕食に事務所に誘ったんだっけ。コナンが阿笠博士のところへ移ってからというもの、『迷』探偵毛利小五郎への依頼は結構へってしまった。もちろん、コナンが本当は新一だってことを知ってからは、父は名探偵じゃなかったっていうのはすぐにわかった。夕食にさそったのは新一と一緒にいたかったというのももちろんあったけれど、新しく舞い込んできた依頼のことで父にすこしヒントをあげさせるためでもあった。

それで雨が降ってきたんだっけ。

それだけなら別段、思い出すようなことでもない。コナンが出かけた早々口にしたのが「灰原、傘もってったのかな」というものでなければ。

「哀ちゃん、出かけてるの?」

そう聞きかえす。

「ああ」

どことなく意識がここにないような感じで返ってくる。

「俺がでるちょっと前に、博士のためにコンビニに行ったんだ」

「それなら、もう帰ってるころじゃないの?」

コナンはあきれたような顔で少し上を向いた。

「前にいっしょにコンビニに行ったとき、あいつ牛乳一パック選ぶのに三十分もしたんだぞ。変な癖だよな、買うものすべての原材料を読むなんてよ。なんか博士のダイエットと関係があるらしいけど」

それに笑顔が自然に浮かぶ。

「そう? 私はかわいいと思うけど」

コナンは、ううん、コナンの中の新一っていったほうがいいのかな、胡散臭げに私を見る。

「『変』の間違いだろ?」

と返してきた。そのころにはもう買い物は終わっていた。コナンは時計を一目見て、次に私を見る。

「蘭、ちょっとしたらお前のところに行くから。ただちょっと灰原が傘もってったのか確かめてくるだけだから」

付け足すように言う。

「経験からいうと、あいつが風引いて、博士がなんかの用事で留守にして結局は俺が看病するはめになるからな」

ちょっと自信過剰な独特の笑みを私に見せ、手を振り、スケボーの一蹴りで去っていった。

そのときは、ただ友達思いなんだなって、そう思ったんだ。
店を出るときに、私も傘を持ってこなかったことに気づくまでは。