小説

RINGS

第 3 話

アキトはやっとリョーコと二人きりになれた。部屋の中でリョーコは自分のベットの上に座り、壁に背を預けていた。目は対する壁をぼんやりと眺めていた。

「リョーコ、話があるんだ」

「ふん、やっと部屋で閉じこもるのをやめたようだな、テンカワ」

リョーコの屈強な防護壁が、再び立ち上げられていた。

「将来のことで、話さなきゃいけないことがあるんだ」

「ユリカと結婚してレストランかなんかを開いて、幸せに暮らすんだろ?俺はパイロットを続けることにするよ、お前と関わったことでその選択肢が潰れてなかったらな」

「リョーコ、お願いだから…」

「お願いだから、何だ?俺たちの関係は終わったんだよ、お前がユリカの元に還ると決めたときからな」

「あの時はそうするしかなかったんだ。リョーコだって分かっていただろう。あの時、ユリカと対面して引かなかったお前は何処にいったんだ。俺を愛している、って言ってくれたじゃないか。もう、ユリカの元にはいけそうもない。けれど、リョーコの元にも行けそうはないな」

「テンカワ、誰かを選ばなきゃいけないんだぞ」

アキトの発言に驚いたリョーコが言い返した。

「ユリカと結婚して、リョーコが愛人ってのはどう?」

リョーコの切り返しにアキトは冗談で答えた。リョーコも冗談に乗る。

「お前のスタミナが持つか、馬鹿」

「リョーコ、お前は俺にどうして欲しい?本当のことを言ってくれ」

「お前の恋人になって、一緒に飛びたい。それだけだ。アキトのことは愛している。お前も知っているだろう」

「けど、俺はユリカを傷つけたくないんだ」

「アキト、決めろ。部屋に閉じこもっていた事について、俺は許せそうにない。俺に何を期待してるんだ?降参してアキトをユリカに譲り渡す、そうして欲しいのか?」

「俺は、コックになりたいんだ。自分のレストランを持ちたい。殺すのは、もう嫌なんだ」

「なら、ユリカのほうがお勧めだよ、アキト。お前はお前の夢を追い続ければいい。俺はお前のレストランでウェイトレスなんて事はできない。パイロット、それが今までの俺で、これからの俺だ」

「裁判によって、俺たち二人ともパイロットなんてできないかもしれない。それに、リョーコ、おまえ前に特攻しただろ、あの一番星コンテストのとき」

「だから何だ?ユリカの元に戻れないのは自殺願望があるクソ女のせいだってか?それについては心配無用だ。お前みたいなクソ野郎なんか、自殺する価値もない」

「リョーコ、もし地球に戻って軍に入ってパイロットになれたとしても二人一緒に、なんて保証はないんだぞ?それに、俺はパイロットには二度となれないだろうしな。お前が休暇もらった時だけ会える、っていうのは俺たちにとって十分な時間なのか?結婚してくれるか?それに、火星のコロニーでは良くやっていけたじゃないか。あの時はパイロットやってなかっただろう」

「それはプロポーズと受け取っていいのか、アキト?返事は、お前がユリカとちゃんと綺麗に分かれた後じゃないと、出せない。彼女にも同じような事を言ったんだろう?決めろ、アキト。ユリカにとっても、俺にとっても、お前にとってもこれはフェアじゃない」

「誰も選ばなかったら、どうなるんだ?」

「俺たち二人を傷つけることになるよ。それで何を得る?お前の罪悪感からの開放か?女々しい。決めろ、選べ、アキト。答えが出るまで、もう話すことはない。帰れ、テンカワ」