小説
RINGS
第 12 話
リョーコは、小さなケースと一つのバッグを持って入ってきた。
「それで全部か?」
「動くときには必要になるものだけを、ってね。父さんがスクラムジェット戦闘機のパイロットだったから、よく引越ししてたんだ」
彼女はベットの一つに荷物を置くと、アキトのとなりに座った。もたれかかってきたリョーコに、アキトは腕を回す。
「リョーコ、話すこといっぱいあるんだ。けど、急ぐ必要もない。今は時間がたっぷりあるんだから」
「アキト、俺、なんか幸せすぎて怖い。この幸せを手に取る権利がないように思う。ちゃんと女らしく振舞ったことなんてなかったし、アキトが俺を女として好きになってくれるなんて信じられなかった。これからはもっと女らしくする。だから、俺を捨てないで。アキトを失うのが怖いんだ」
「リョーコ、別にいいよ。俺は素のままのリョーコが好きなんだ。リョーコほど勇気があって、偽りのない心をもった人、リョーコ以外には知らない。ずっと前から憧れていて、尊敬してた。リョーコを、絶対に裏切りはしないから」
アキトがリョーコの髪をなでる。
「リョーコ、結婚式はどうしたい?」
「いろんなゴタゴタはいらない。俺は簡易式だけで十分だよ、できるだけ早くな。近しい親戚はもういないし、知人っていえばナデシコのクルーだけだよ。すこし状況が違ってたら艦長に式をやってもらうのも良かったんだけど、ユリカに頼むわけにはいかないだろ」
「そうだな。ユリカに頼むのは残酷だろう。この宇宙軍のエスコートの艦長に頼んでやってもらうか?」
「いや、そこまで急がなくてもいいよ、アキト。地球に戻ってからにしよう」
「ルリちゃんが、地球に戻ったら何が起こるか分からない、って心配してた。家族はいないし、生物学的な意味での両親は赤の他人。もし良かったら俺達についていってもいいか、って聞かれたんだ。俺とユリカについていきたかったらしくて、リョーコのことは少し苦手みたい」
「ルリしてみれば、ミナトとユキナについていったほうが良くないか?宇宙ステーションより地球のほうがいいと思うけど」
「俺達とついてきて欲しくないの?」
「そうは言ってない。ただ、そっちのほうがルリにいいって思っただけだよ」
「俺はルリちゃんと友達でいるって、そう約束したんだ。ルリちゃんは、俺との連絡が途切れるかもしてないって、心配してるんだ」
「ルリがついてきたかったら、俺は歓迎するよ。たとえルリが俺のことを悪の義母だと思っていてもね」
リョーコが鼻を鳴らす。
「大丈夫だよ。ルリが年齢以上に成熟してるのは、リョーコも知ってるだろう?ところで、ヒカルちゃんとイズミさんは戻ったら何をするんだ?」
「ヒカルはプロの漫画家になりたいって言ってた」
「イズミさんは?」
「知るか。未だに何考えてるのかわかんねぇよ」