小説
RINGS
第 10 話
クルーたちは、沈んでいた気を紛らわすことができて楽しそう。殆どが嬉しそうに二人を祝福した。後ろにジュンを連れたユリカが入ってきた。辛そく、寂しそうだった。彼女はまっすぐにアキトとリョーコへと赴いた。
「スバルさん、テンカワさん、お幸せに」
二人を抱く。その際にリョーコの手を取って、聞こえるかどうかというほどの小さな声で囁いた。
「リョーコちゃん、私のアキトをよろしく……」
不自然な沈黙が続く。ジュンはユリカの手を取り、外へと導いていった。
ヒカルとイズミが興味津々な様子で、リョーコに詰め寄った。
「リョーコ、二人で行方不明になってた間に何があったの?もう、知りたくて知りたくてたまらないの!ユリカからアキトを勝ち取るって事は、なんかすごいことが起こったんでしょう?」
ヒカルがリョーコに問いただす。
リョーコはこの一時、普段うるさい仲間たちからからかわれるのを嫌に思わなかった。幸せ。誰も、何も、この今日を破壊することはできない。リョーコは上機嫌でヒカル達とテーブルにすわり、事のあらましを説明しだした。
一方、ルリがアキトの方に来た。
「テンカワさん、あなたがどうしてユリカさんにこんなことができるのか、理解できません」
「ルリちゃん、本当はこんなところで話す内容でもないんだけど、君は答えを得るだけの権利があるからね。考えてみたら、選択なんてできなかったんだ。ユリカを選んだなら、リョーコちゃんがもっと傷つく。一番、痛みがないほうを選んだつもりなんだ」
「これからリョーコさんとは如何するつもりなんですか?」
「リョーコはこれからもパイロットを続ける。ネルガルの宇宙ステーションの一つにでも配属されたら、と思ってるんだ。俺はそこで食堂を開いて、一緒にいられる」
「私はどうなるんですか?アキトさんとリョーコさんについていってもいいんですか?」
「それは、まだリョーコと話し合ってないんだ、ルリちゃん。地球についた後、どうなるかもまだ分からないしね」
「アキトさんとユリカさんの方が良かったな。リョーコさんは…どこか怖く感じる」
「ルリ、リョーコはいい人だよ。俺達のために何度も命をはってくれた。あの一番星コンテストのときも、皆がいない間守ってくれたのを覚えてる」
ルリはコンテストの自分のエントリーを思い出して、赤くなる。
「家庭的な雰囲気が欲しかったんです。リョーコさんはあまり母性的とは思えないんです」
「冗談かな?」
アキトが笑った。
「ナデシコが私の帰る場所、だったんです。皆さんがそれぞれの道を歩み始めてしまうと、私には何も残らなくなる」
「ナデシコの終わりは避けられないことだったんだよ、ルリ。戦争も終わったし、ナデシコも今はブリッジ部しか残ってない。以前と同じようにはいかないさ。俺はユリカと共に歩めない。何を求めてるのか考えてみて、ルリちゃん。君が俺達と一緒に生きたいんなら、リョーコと話し合ってみるよ」