小説
LONELINESS
第 9 話
エリナ・キンジョウ・ウォンとアカツキ・ナガレは、大きな木作りの机の後ろに座っていた。警備員たちの後ろにアキトとリョーコがいるのを見届けて、アカツキは警備員たちを解放した。
「ミス・スバル、なにか説明することはありますか?なぜミスター・テンカワはこの艦に乗っているのですか?」
リョーコは少し頬が上気していた。
「ちょっとナガレ、そんな言い方は可哀相でしょ。彼女が恥ずかしがってるじゃない。多分、この彼氏と離れるのに耐えられなくて秘密裏に乗り込ませたんでしょ」
リョーコはもう真っ赤になっていた。頭から湯気が出ているかもしれない。
「彼女のアイデアじゃなかったんですよ。クルー募集中っていうのを聞いて、発信してしまう前に乗り込みたかったんですよ。俺、ついさっきコックの仕事を首に……」
「コックさん、ねぇ。普通はフロントの受付で応募するもんなんだけどね」
「テンカワは本当はエステのパイロットで、エース級の実力があるんだよ。ナデシコの問題で、いろいろ雇うことができなかったって、だから……」
リョーコが補足を入れる。
「エリナ君、彼を宇宙へ放り出さない理由、あるかい?」
「ちょっと待って、彼の素性を確かめてからよ。その名前、テンカワってどこか思うところがあるのよね」
エリナはDNA・テスターをアキトの口に突っ込み、舌にあてた。一、二秒してディスプレイに『テンカワ・アキト 最終確認地:火星・ユートピアコロニー』と表示された。
それを見たエリナはアカツキに意味ありげな視線を送った。
「火星からどうやって地球まで来たのよ!」
エリナが尋問する。
「それに、コックはIFSなんてつけないわよ!」
「……」
アキトは静かにしているのが最良と思い、黙秘する。
「……わかった。テンカワ君は厨房で手伝ってもらうことにしよう。確かに、人員は不足しているからね。ミスター・ミナに言っておく。パイロットのほうは、君がどの程度なのか跡でシュミレーターででも確かめさせてもらおう」
アカツキはそれを最後に二人を解放した。
アキトとリョーコは廊下を歩きながら、安堵のため息を漏らした。リョーコの顔は少しずつ鎮まっていった。
「赤くなったリョーコちゃん、可愛かったな」
アキトが、少しからからかいを含めて言った。
「こ、この……」
反論しかけたが、リョーコは言い争うだけのエネルギーはもう残っていなかった。