小説

LONELINESS

第 8 話

リョーコは緊張しながら廊下を見渡し、誰もいないことを確認するとカードキーで扉を開けた。

「テンカワ、食事もって来たぞ」

優しい声だった。リョーコはアキトの隣に座り、トレーを手渡した。アキトはその手渡されたトレーに載っている料理を疑り深く凝視する。

「これ、リョーコちゃんが作ったの?」

「俺が作ったらどうしたってんだよ!」

「いや……なんでもない」

「テンカワ、お前はほんとに失礼なやつだな。お前が食中毒になったのはあの二人の料理のせいだろうが!」

俺のは……味見もしてくれなかったくせに。

「それは食堂からのものだよ、大丈夫だ。ホウメイさんの基準に合格するとは思えないけどな」

それを聞いて、おなかを空かしていたアキトはものすごい勢いで食べ始めた。

「まぁまぁ、かな。少し平坦な味だけど。……リョーコちゃん、イズミさんとヒカルちゃんはどうなったの?みんなをジャンプさせようと思ったんだけど、少し遠すぎたようなんだ」

「イズミとヒカルならナデシコに乗っている。もっとも、俺たちが知っているイズミとヒカリかは分からないけど。この世界は俺たちのとは違う。俺たちはこのコスモスで月奪還のための地球連合の艦隊に統合されることになる。俺は戦いの最中にナデシコが現れてくれるのを願っているんだ。そしたらイネスにも会えるかもしれないし、イズミとヒカルが俺たちの知っているやつらなのかどうか確かめることもできる」

「リョーコちゃん……いてくれてよかった。生きててくれてよかった」

「……テンカワ、ナデシコにはユリカがいる。会いに行きたいんだろう?」

「彼女は、まだ俺のことを知らない。俺たちを引き合わせた事なんかはまだ起こっていない。別人のようだよ、記憶は人の本となるもので、このユリかはその記憶を持っていない。元の世界に戻る方法を見つけなきゃ、俺たちだけだよ、俺たちのナデシコの残りは」

リョーコは震えるアキトの肩に自分の腕をまわした。

「分かってる。…………俺も、元道理になってほしいよ」

けど、本当にそう思っているのか?自分がテンカワに何か思いを抱いているのは知っている。たとえテンカワがユリかを好きで、ユリかが本気でテンカワを愛していることを知っていても。

今、自分は誰よりもアキトに近い場所にいる。その優越感に嫌悪がして、テンカワの肩にまわしていた腕を解こうとする。

解くその一瞬前、部屋の扉が開き、二人の女と数人の警備員がなだれ込んできた。

「ほら、言ったでしょ、カザマ」

得意そうに言うサクラ。

「リョーコが彼氏を連れ込んだって」

「俺はリョーコちゃんの彼女なんかじゃ……!」

サクラの言葉に反論するアキト。

「スバルさん……それとテンカワさん、私たちに付いてきていただけますか?アカツキさんがお待ちしています」

アキトの名前を一日パスから読み取ったあと、それだけを言って警備員たちが部屋から出て行った。