小説

LONELINESS

第 37 話

アキトはとってきた蜜柑を数個イネスへともっていった。

「蜜柑、どう?」

そのうちの一つを手渡す。

「スバルさんはあなたがこんなことしてるって知ってるのかしら?」

イネスがアキトをからかう。

「大丈夫。蜜柑もたくさんあるから、どうぞ」

蜜柑の皮をむき、イネスが一口かじる。

――懐かしい味に、目を見開く。

『デートしよ?』

唇は動くが、声は出ない。真っ暗になった。

しばらくして、蜜柑を他の人たちに配り終わったリョーコがアキトと気絶したイネスを見つけた。

「イネスはどうしたんだ?蜜柑が悪かったのか?」

「多分、思い出したんだと思う。むかし、シェルターでアイちゃんにあげた蜜柑を思い出したんじゃないかな」

アキトが言うと同時に、イネスが身動ぎし目を開く。少し気だるげに開かれた瞳がアキトを見つけ、細まる。

「あの時の…やっと会えた、お兄ちゃん……」

目が閉じられ、涙が流れる。

アキトはイネスのほうへと歩み寄り、抱きしめた。二人とも、泣いた。