小説
LONELINESS
第 24 話
展望室。
リョーコとアキトは人口芝生の上に腰を下ろし、天井に映る青い空と白い雲を眺めていた。
「全てがうまくいったら、明日、ここから離れられる。まあ、木星蜥蜴が攻めてきても、今回は遭難しない自信があるし。ユリカやメグミちゃんが競って助けに来る、なんて事はないと思うけどね」
アキトが思い出した記憶にリョーコは鼻を鳴らす。
「ふん、今回は見向きもしないよ、お前なんかには。もし遭難したら、俺が直接行くしかないと思うぜ」
自分の想像で、リョーコはくすくすと笑い始めた。
「あの時の白熊救出作戦みたいにな」
アキトの頭にもイメージが湧き上がり、笑い始める。
「そう思えば、リョーコが笑ったのって始めて見たよ」
アキトは、思考を前の世界のこれから起こったことに馳せた。
白熊の次は、南の島でのチューリップ。あの日、アクアに毒を盛らされて心中されかけていたところを助けてもらった。襲ってきた巨大バッタを、アカツキも驚くほどの猛烈な攻撃で沈黙させたのだ。あの時のリョーコには本当に感謝している。
振り返ってみると、メグミやアクア。女を見る目がなかったな。
あの日、あの後、ユリカやメグミが手料理を食べさせようと追ってきた。リョーコも参加していた。
「あの時、リョーコちゃんの料理食べなかったこと、ごめん」
リョーコにしてみればいきなりだったのだろう。しかし、すこしキョトンとした後、思い出したようだった。
「いいよ、別に。ヒカルとイズミも毒だって言ってたしな」
アキトがあの時を覚えていたという事に、思わず頬が熱くなる。リョーコにとっては、恥ずかしい思い出だった。アキトが料理で命の危険にさらされた日に、自分の料理を食べてもらおう。そんな馬鹿なことを考えていたときのことなんて、忘れていたかった。
頬を赤くして少し縮こまってしまったリョーコをみて、アキトはふと気づいた。
―――『リョーコは俺が好きなんだ』
あの料理のこと以外、俺に気づかれないようにしていたんだろう。今まで、全く気づかなかった。よくリョーコをからかっていたヒカルやイズミは気づいていたんだろう。あの一番星コンテストの時の、自殺願望があったような単独戦闘は、俺に嫌われてるって思ったからなんだろうか。あの時、リョーコは独りで死んでしまっていたかもしれない。そう思うと、背筋が寒くなった。
地獄のようなものだったのだろうか、こっちの世界にきてからの日々は。好きな人と彼氏彼女を演じるのは。天国になったかもしれない。けれど、彼女はそんな境遇などを利用しようとはしなかった。
アキトはリョーコに対する尊敬を改めた。尊敬を改めると、見方も変わった。可愛い、と思うようになった。そして、自分の鈍感さで彼女を再び傷つけないよう誓った。
「リョーコちゃん、明日のボソンジャンプの実験ではちゃんと準備していてよ。合図したら、できるだけ俺の近くに来てユートピアコロニーをイメージして。でないと、どこに飛ぶか分からないから。最悪、宇宙に放り出されたり、イネスさんのようになってしまうかもしれない」
「わかってる」
「ん…じゃあ、まだ夜まで時間あるし、バーチャルルームにでも行かない?」
「デートにでも誘ってるつもりなのか?」
少しアキトから距離をおきたかったリョーコは、ほんの少しの苛立ちを込めて問いかけ返した。アキトは、天井に映る空を見上げ、リョーコがOKするようなことを考える。
「バーチャルルームは恋人だけっていうわけじゃないよ。友達ってことで、バスケでもやらない?」
バスケなら大丈夫か。そう答えを出したリョーコは、アキトの申し出を受けた。
「乗ったぜ」
二人とも笑顔になった。