小説
LONELINESS
第 22 話
アキトとリョーコは、昼食をとるために食堂で会った。
「あっちに還れるのか、還れないのかはっきりする前にこっちにあまり関わりを持つと面倒になるぞ」
料理しているホウメイを見て自分も料理をしたいという誘惑に負けそうになったが、リョーコの注意で思いとどまった。
「で、エリナとはどうなったんだ、テンカワ?」
「多分、よくいったと思う。明日から実験が始まる予定だよ。実験にはリョーコも立ち会えるよう、許可をもらったから。CCの量が十分だったら、最初の実験でユートピアコロニーへ跳べると思う」
「よかった」
「コスモスからの私物はもう持ってきたの?」
「ああ。それと、サクラとのことも解決してきた。お前がユリカに惚れてるってことで、俺もサクラも彼氏にはなれないっていったら、納得してくれたみたいだ」
「…それ、艦中に言いふらされないのか?」
「大丈夫だよ、コスモスとはもう少しで離れる」
ユリカとジュンが食堂へ入ってきた。
自分たちへと向かってくるのを見て、アキトは隠れたくなった。
「乗艦歓迎にでれなくて御免なさい。ブリッジでやることがあったの」
ユリカが話しかけてくる。
「ようこそ、機動戦艦ナデシコへ。私が艦長のミスマル・ユリカです、よろしく。こちらが副長のアオイ・ジュン」
「中尉、リョーコ・スバル」
リョーコは席から立ち上がりながら自己紹介する。
「んで、こっちがパイロットのテンカワ・アキト」
「テンカワ?ひょっとしてユートピアコロニーに住んでいたことがありますか?」
「いえ、ないです」
アキトは嘘をついた。
「そうですか。何はともあれ、よくナデシコを守ってくれたと聞きました。あなた方のようなパイロットが、ナデシコに来ることになって嬉しいです」
ユリカはジュンを連れて他のテーブルに対面して座った。手をつないでるのを見てリョーコがアキトに聞く。
「気にならないのか?」
アキトの頭はまだユリカの香水の香りでいっぱいだった。
ユリカ。俺にキスをねだってきたユリカ。俺の、ユリカ。俺の妻のユリカ。初めての『大人』のキス。幼い頃にいっぱいキスしたのを忘れていたユリカには笑えた。
「別に。あのユリカは、俺のユリカじゃない」
最近の記憶がよみがえってきた。
ユリカの俺。妄想に浸るユリカ。嫉妬したユリカ。大量殺人犯のユリカ。
「リョーコ、展望室にでも行こう。今の時間帯だと余り人がいないはずだ。これからは自動販売機でなんか買って、部屋で食べたほうがいいかな?こうやって人に会うことにはならないし。もう少しでユリカにばれるかと思って冷や冷やしてたんだよ」
リョーコはその意見に賛成した。
ユリカの存在は、自分に不安をもたらす。ユリカがアキトを掻っ攫っていってしまい、自分はこの世界に独り。そんな、不合理的な恐怖があった。
アキトが立ち上がると同時に、そんな考えを頭の隅へと押しやり、アキトについていく。
ユリカはそんな二人を、天真爛漫な笑顔で手を振りながら見送った。