小説
LONELINESS
第 20 話
ナデシコは修理と改修のためにコスモスにドッキングしていた。
リョーコは少ない私物を取りにいったんコスモスへ戻った。アキトはコスモスに密航するために私物を全て捨てたので、リョーコが荷物を取りに行っている間にナデシコでエリナと話をつけることにした。
リョーコはコスモスでの自分の部屋のドアを開けた。サクラとカザマは各々のベットで横になり、休んでいるようだ。少ない荷物のうち、さらに少ない散らかった私物を鞄の中に詰め込む。その間、サクラはずっとリョーコを睨んでいた。
あらかた鞄の中に詰め終わったとき、カザマがベットから降り、リョーコに手を差し出した。
「あなたの元で戦えたことを嬉しく思います。また、会えてよかったと思います」
差し出された手を見ながら、こっちのカザマも同じようにボソンジャンプに巻き込まれて死ぬのか、という疑問が頭の中をよぎる。
こんなことを考えるのはよそう。耐え切れなくなる。手を握り合い、握手する。
カザマとの別れがすんだ後、未だに自分のほうを睨みつけているサクラに目を移す。
「サクラ、話し合えないか?」
「何を話し合うの?アキト君にちょっかい出すな?けど、もう意味無いよね。二人でナデシコに転属できたんだから」
「そんなんじゃないんだよ、サクラ。ナデシコはパイロット不足だった。戦いで一人失ってからは副長までがパイロットやってるんだ。俺はもともとナデシコに乗るはずだったんだしな」
「けど、ナデシコがドックされているうちは私をアキト君から遠ざけることはできないよ」
「テンカワはあいつがしたいようにするさ。俺はただお前が傷つかないようにしようとしてるだけなんだよ。俺はあいつの彼女じゃない。あれはテンカワをこのコスモスに乗せるための嘘さ。本当はただの友達。それに、テンカワはナデシコの艦長、ミスマル・ユリカに惚れてるんだ。火星で幼馴染みだったらしい。余所見はしないよ、あいつは。お前たちとカラオケに行ったのも、ただの付き合いだ」
「そんなこと言われても、信じられるわけ無いじゃない!リョーコ、あなたアキト君と寝たでしょう!」
思ってたよりも頑固だな、サクラも。
「寝たって、確かに同じ部屋で寝たけど、お前が思ってるようなことは無かったぞ。ベットも上段と下段に分かれたしな。お前らに『そう』思ってもらえればよかったんだよ。やけに女性の多いこの艦では、テンカワから人を遠ざけるにはそうするしかなかったんだ」
これでサクラはリョーコのことを信用した。アキトと寝たように見せかけてそれを否定するのは、リョーコにとって何の特にもならないことだから。
「…アキト君は本当にミスマルさんが好きなの?」
「そう言っただろ」
「彼女はそのことを知ってるの?」
「それは知らない。あいつらが最後に会ったのってずいぶん前らしいから」
リョーコはそれを最後に、サクラに背を向けた。
「リョーコ、ごめん、疑ってて」
足を止める。
「リョーコはアキト君が好き。だけど、アキト君はユリカが好き!」
止めた足を走らせて、逃げる。サクラにばれた?何で?心では分かっていたこと。けど改めて言われると、耐えられなかった。
「サクラ、意地悪」
軽く咎める口調でカザマが言った。
「けど、間違ってないでしょ」
サクラが答える。