小説

LONELINESS

第 17 話

ヒカルはリョーコに向かって跳び、抱きつく。

「コロニーが爆発したときにリョーコも死んじゃったと思ってたんだよ!」

リョーコは何とかヒカルを自分の体から引き剥がす。

「落ち着け、ヒカル」

「リョーコ、あなたと一緒にいるパイロット…コックはだれ?」

アキトのユニフォームを一秒注視していう。

本当に覚えてないんだな。いや…知らないというほうが正しいか。俺のことも。アキトのことも。心が沈む感覚がする。この世界に二人っきり。

リョーコはアキトの手を握ると、自分のほうへ引っ張る。

「俺の彼氏だよ。エステバリスパイロット、テンカワ・アキトだ。テンカワ、おれのアカデミーからの同僚、アマノ・ヒカルとマキ・イズミだ」

イズミはアキトを見やると、いつもの青ざめたような顔でクククッと笑う。

アキトは二人に向かって少し頭を下げる。まだ、リョーコに『彼氏』と紹介されたショックから立ち直れないでいた。

リョーコはそんなアキトを見て、アキトを彼氏として紹介したことを悔いる。コスモスでは良かったかもしれない。けれど、ナデシコにはユリカがいる。メグミは退けられるだろうけれど、ユリカを止めることはできないだろう。

あのキスのせいだ。なんでアキトはあんな甘いキスをしたんだ?イネスと会ってもとの世界に戻れなかったら…。『こっち』のユリカと張り合える気はしない。

「あいつは?」

イズミがエステから降りてくるアカツキを見て言った。

「アカツキ・ナガレ、コスモスの年長パイロット」

いくらか落ち着きを取り戻したリョーコが答える。

「テンカワとスバルはナデシコに配属されることになる。艦長に会って話してくるから、コスモスとのドッキングが完了したら荷物をとりにいってくれ」

ヒカルとイズミと擦れ違いながら気障っぽい笑みを浮かべる。

「それじゃ、失礼、レディ達」

「よかったね、リョーコ。あたし達の部屋に来なよ。これで前みたいに三人でつるめるね」

ヒカルは嬉しそうに笑う。

「テンカワ君はヤマダ君と一緒すれば?」

言い終わったと同時に医療班が血塗れのシーツに包まれたガイを押してくる。

「ヤマダ君…死んじゃったの?」

アキトは暗そうな目でガイが運ばれていくのを見送る。

「けど、ヤマダ君のエステは…」

「俺とアキトがあいつのエステのフレームを運んできたんだ。遺体を回収するためにな。木星蜥蜴の戦艦の特攻からナデシコを守ろうとして、爆発に巻き込まれたんだ。まぁ…ヒーローらしい死に方だった」

リョーコの話にヒカルの目に涙がたまりはじめる。

「アキト、行こう。シャワーが浴びたい」

リョーコはアキトをつれて格納庫を出た。いくらか沈んだヒカルとイズミもリョーコについて出て行った。

途中でヒカルとイズミと分かれた後、リョーコはアキトを男性区域につれていった。

「…大丈夫か、テンカワ?」

「大丈夫だよ。少し休む時間と考える時間がいるだけだよ」

「俺はあいつらと話してなんか分かることがあるか探ってみる。あとでお前のところに行くから」

「わかった」

アキトは部屋のドアを閉める。ガイの部屋だった。ゲキガンガーのグッズがそこらじゅうに置いてある。アキトは散らばっているアニメのディスクの中の一枚を手に取り、プレーヤーに入れる。画面に映し出されたのはジョーが死ぬシーンだった。