小説

LONELINESS

第 15 話

いろんなことがあったけど、アキトはカラオケを楽しんでいた。二人とも綺麗な声をしていた。カザマの存在がサクラを歯止めしていてくれた。バーチャル観客はよい反応をしてくれたし、バーチャル歌手は単調になるのを防いでくれた。アキトは二人に何か歌ってとせがまれて、まあまあなゲキガンガーのテーマを歌った。

遅くなったので解散することにして、アキトは自分の部屋へと急いだ。―――今回はありがたいことに一人で。

部屋のドアを開けて中に入る。明かりをつけて、着替えようとしたそのところに、ベッドの上が盛り上がり、少し寝ぼけたリョーコが姿を現した。

「プレイボーイ様がデートからのお帰りか」

リョーコがぼやいた。

「リ、リ、リョーコちゃん!?何でここに!?」

「お前がなんか話したいんだろう?来てやったんだから、話そうぜ」

「デートじゃなかったんだ、カザマさんとサクラさんがいたし、何もおきなかったし…」

「なんであいつらについて行ったんだ?今日俺が来ることは知ってただろ?」

「断れなかったんだよ。リョーコちゃんは彼女じゃないって言ったら、喧嘩してる最中なんだって誤解されて…」

「くそが、テンカワ。何で俺がお前の彼女じゃないって言いまわらなきゃいけなかったんだ?格好の隠れ蓑だったのに」

「ごめん、リョーコちゃん。なんか俺、必要以上に敏感になってるだけだと思う。ナデシコで俺を自分のものって言ってまわる人たちに嫌気が差してて…」

「サクラとカザマとはあんまり仲良くしないほうがいいぞ。戻るときになったら厄介になる」

「わかったよ…だったらせめて公でキスでもしない?それとも今晩ここに泊まって、明日言いふらせばサクラを歯止めできると思うけど」

「泊まっ…!?俺はお前とは寝ないぞ!」

「そういう意味じゃないってば。ここには空いているベッドもあるし。まったく、話に沿ってないのはどっちのほうだよ」

リョーコはそれを聞いて小さく唸る。

「わかったよ。で、テンカワ、これからどうすんだ?」

前よりかは多少やわらかく問う。

「アカツキとエリナさんがナデシコに乗り込むのは間違いないと思う…まあ、戻ってくればね。俺も一緒に連れて行かれると思う。エリナさんはもう俺のボソンジャンプに目をつけたようだから。後はリョーコちゃんも乗れるようにできたら万全なんだけど…」

「ナデシコが戻ってこなかったらどうするんだよ?」

「イネスさんがどこにいるかわかったら、彼女のところへボソンジャンプすることができるけど…」

「何で、今、それをやんないんだよ?」

「CCが無いんだ」

「けど、あの時はCC無くてもボソンジャンプしたじゃないか!」

「それは、わかんない。何か危機に陥るとか、そういうものかも。たとえば最初に火星から地球に来たときのように…コントロールはできなかったけど。けど、その時もCCを持ってたし…。なんにせよ、もしナデシコが戻ってこなかったら、エリナさんのボソンジャンプ実験に付き合ってイネスさんを探すしかないな」

「イネスが俺たちを助けられる保障はあるのか?」

「アイちゃんの記憶を取り戻させれば、俺たちのことを信じてくれるはずだ。まあ、今のところはナデシコを待つしかないな。ヒカルちゃんやイズミさんが気になる」

「そうだな。テンカワ、もう寝よう。明日、敵艦隊が来るかもしれない。たぶんパトロールなんかじゃなくて戦闘をする羽目になると思う。つ~わけで、後ろ向け。着替える」

アキトはリョーコにしたがって回れ右をして壁のほうを向いた。リョーコはそれを確認すると制服を脱ぎ、下着のままベットの上段にもぐりこんだ。

「いいぞ、もう」

アキトに声をかける。

アキトはベットの下段に腰をかけ、服を脱ぐと電気を消して横になった。疲れのためか、アキトは一分もしないうちに眠りに落ちた。

それに対してリョーコは全然眠れなかった。部屋全体、ベットからもアキトの匂いがした。下段のベットから静かなアキトの寝息が聞こえる。ドキドキして耐えられなかった。

くそ、くそ、くそ。もう絶対にアキトの部屋では眠らないからな!心の中でリョーコは毒づいた。