小説
LONELINESS
第 12 話
エステバリスのハンガーを見下ろすデッキの柵に肘をつきながら、アキトは下のほうを何となくに眺めていた。
「テンカワ、お前こんな所で何やってるんだ?」
「パイロット、テンカワ着任しました、スバル中尉!」
アキトはわざとらしい敬礼とともにリョーコに言った。
「中尉はやめろって!」
「アカツキにパイロットに任命されたんだよ」
「何をしたんだ?」
「シュミレーターであいつに圧勝したんだ。そしたら、人員不足もあるし、十分パイロットとしてやっていけるだろうってね」
「そいつは良かったな、テンカワ」
「次のパトロールはリョーコちゃんと一緒にいくことになってるんだよ」
「なら、下に下りて整備班長に一機もらって来い。ここのは全部一緒だよ、ナデシコでのカスタム・0Gとは違ってな。恐れながら、色は自分の好きな色、ただしバトルシップ・グレイ(少し青がかかった灰色)だけだけどな」
アキトがまた自分と一緒にパイロットをすることを知って、リョーコは少し妙な感覚に戸惑っていた。避けていたいはずだったのに、戦闘の際に自分の傍らにはこれ以上の人はいないと思える。
カザマとサクラの顔が頭の中に浮かんできて、またいろいろと秋とのことで言われるのかと思うと、気が重くなった。それと同時になぜアキトの事を避けていたのかを疑問に感じる。さっきは会いたくて会いたくてしょうがなかった。そして、それが問題でもあった。
私ら二人だけなんだ、この世界で二人だけ。この違う世界で自分が持っている、唯一の仲間。けれど、それだけじゃない。アキトへの想いは、自分の心を蝕んでいる。ユリカはそれなりに尊敬してもいたし、メグミのようにこんな状態を自分の得なようにもっていくことはできなかった。
想いを伝えたら、もう戻ることは許されない。伝えて…アキトに拒絶されるのが恐ろしいくらいに怖い。
自分は今、どうなっているんだろう?そう自問いしても、分かるはずがない。
「リョーコちゃん……俺のこと避けてる?」
そらきた。
「俺は忙しくて疲れてるんだけどな、お前が気づいてないんだったらな!」
「けど、ナデシコが現れたときにどうするかは決めておくべきだと思う。」
「ナデシコが現れ『たら』じゃないのか?」
「どっちにしても、計画は立てておかなきゃ。現れなかったら僕達で火星に行ってイネスさんを見つけられるかも」
「どうやって火星にまで行くんだよ、アホか?この船乗っ取って火星まで行くのか?」
「ちょっと静かに、カザマさんとサクラさんがくる」
「テンカワ、今夜パトロールが終わったあとに話そう」
ああ、なんて事を言ってしまったんだ。