小説

LONELINESS

第 11 話

ミスター・ミナは有能なコックだったが、ホウメイのような情熱が欠けていた。アキトは厨房でうまくやっていた。なるべく頭を下げ、問題ごとには巻き込まれないでいた。

連合の艦隊はまだ準備している途中で、コスモスは現在暇だった。

リョーコは自分と同じシフトのパイロットたちとパトロール飛行をしていた。大体、任務が終わるとすぐに床に就き、アキトは食事中のわずかな時間だけしか会えなかった。しかし、それもいつも忙しいときで、アキトはあちらこちらを回りながら料理している時間帯だった。

避けられている気がする。寂しいな、とアキトは思っていた。リョーコはアキトが前の世界との唯一の繋がりだった。

アカツキが食堂へ足を踏み入れた。

「ミナ、テンカワ君を少しの間貸してくれないかな?エステの戦闘シュミレーションをさせて、パイロットのほうはどのくらいか計りたいんだけど」

「ああ、今は忙しくないから別にかまわんさ。けど、夕飯ラッシュまでには返してくれよ」

「というわけで、テンカワ君、どうかな?」

「いいよ」

アカツキとアキトは無言でエステのシュミレーター室へと向かっていた。無言に耐え切れなくなったのか、アカツキが軽い口調で話し始める。

「あのスバルって女の子、昔からの知り合いなのかい?」

「いや、ドックで会ったのが初めてだよ」

アキトは嘘をついた。

「彼女は君のパイロット能力とかいうやつを知っていたみたいだけど?」

「あれは、基地から追い出されないために俺が彼女についた嘘だよ」

「じゃあ、君は彼女と付き合ってないってことかな?」

「ああ、ほんの少し知っているだけだ」

「それはよかった。今度誘ってみよう。彼女は熱く燃えるタイプみたいなんだろうな」

アキトは内心、少し悪いと思いながらもほくそえむのをやめられなかった。リョーコがアカツキの誘いを受ける確立は皆無だろう。アカツキが過去でやってきたこと、これからやることは知っている。それでも、アキトは無視できない小さな嫉妬の棘を心のどこかで感じていた。

アキトとアカツキは同時にシュミレーターへと入った。アキトは先ほどから感じていたムカムカする何かをアカツキへとぶつけるべく意気揚々と、アカツキは自信があるのか軽い調子で入り込んでいった。

「さあ、君がどれほどのものか見せてもらおうか」

シュミレーター内の通信ウィンドウがアキトの前に開いた。それと同時にシュミレーション開始のカウントダウンが表示される。

カウントがゼロになるのと同時に秋とは正確無比な射撃を開始した。もちろん残段数にも気を配り、いつでも攻撃を回避できるようにしながら。実践で痛いほどの失敗を繰り返しながら身についたことだった。

アカツキは回避を繰り返しながら攻撃してくるアキトに反撃するまでに、もう何箇所か痛手を負ってしまっていた。

弾が残り少なくなったアキトは、接近攻撃を仕掛け始めた。ディストーション・フィールドで強化された武器がぶつかり合うたびに激しい火花が散る。

アカツキは上手くアキトの攻撃を裁いていたが、すでにアキトからのライフルで被弾していることもあり、アキトの猛攻の前に少しずつ後退を余儀なくされていた。

くる……けど、前のようにはいかないぞ、アカツキ!

後退していたアカツキ機が一瞬止まり、ライフルを逆手で掴んでそれを棍棒のようにしてアキトを襲った。アキトはそれを機体を少し捻ることで捌き、すれ違いざまにアカツキのエステの装甲の隙間にライフルの銃口をあて、残弾すべてをその一点に叩き込んだ。アカツキの一撃はアキト機の装甲に弾かれ、アキトの放った弾はアカツキ機を貫通し、アカツキのエステは派手に爆発した。

アカツキは自分の敗北に困惑していた。テンカワはベテランのように戦っていた。しかし、それは不可能なはずだった。彼にはどうやってもエステにさわる機会などなかったはずだし、戦闘経験などあるはずもなかった……はずだった。

「テンカワ君、君にはこれからパイロットになってもらう」

「コックは続けられるのか?」

「いや、ミナには悪いが一人でやってもらうしかない。これから戦闘がはじまる。パイロットは本当はもっとほしいぐらいなんだよ。格納庫へ行ってパイロットの制服とスーツをもらってこい。その後、スバル中尉に報告して次からテンカワ君もパトロールに出てくれ」